#4 シスター

死を覚悟して、私はぎゅっと目を閉じた。
……けれど、いつまで経っても衝撃はやってこない。
代わりに聞こえてきたのは、「う、ううっ……!」という、必死に堪えるような声だった。
恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。親友の鈴乃柚來が、私の目の前でモンスターの巨大な腕を必死に支えていたのだ。
彼女は魔法少女じゃない。特別な力なんて持っていない、ただの女の子だ。
その非力な力で、細い腕を激しく震わせながら、生身のまま私を守ろうとしてくれている。
「……燐ちゃん、今……! やって!」
柚來の叫びで、私の頭に血が上った。
死ぬのが怖い? 爆発するのが怖い? そんなこと言ってる場合じゃない。私の友達が、命懸けで隙を作ってくれているんだ!
「……あああああッ!!」
私は夢中で叫びながら、手近な武器を振り下ろした。
柚來が止めてくれたおかげで、攻撃は吸い込まれるように灰色の化け物の核へと突き刺さる。
嫌な手応えと共に、モンスターは霧のように霧散していった。
「はぁ、はぁ……っ」
肩で息をしながら、私は座り込む。横では、今の衝撃で弾き飛ばされた柚來が、ふらふらと立ち上がろうとしていた。
「燐ちゃん、大丈夫……?」
柚來が自分の傷も顧みず、心配そうに私に手を伸ばす。
その優しさに胸が熱くなり、「大丈夫だよ」と答えようとした、その時だった。
「あら、怪我をしてしまったのですね……」
場違いなほど穏やかな声が響き、聖職者のような装束に身を包んだシスターなぎが姿を現した。
彼女は私のボロボロになった姿を見て、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。
「でも大丈夫ですよ! 変身を解けば、魔法少女としてのそんな怪我なんて、へっちゃらですから!」
なぎさんは優しく私に手を差し伸べた。
その言葉はどこか救いのようでもあり、同時に、逃れられない魔法少女としての運命を突きつけられたようでもあった。