二話です!

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【第2話:いじめっ子と魔法少女】

煌蘭は、魔法少女になった。
それは、彼女にとってすべてだった。学校で、家で、どこにも居場所を見つけられなかった煌蘭の心に、魔法少女としての活動が、確かな光を与えてくれた。夜の街を飛び回り、怪物を倒す。そのたびに人々から向けられる尊敬と感謝の眼差し。ネットの掲示板には「魔法少女ちゃん、今日もありがとう!」「大好き!」といった書き込みが増えていく。そのすべてが、煌蘭の胸を温かく満たしてくれた。
もう、ひとりぼっちじゃない。
そう思えるだけで、煌蘭は強くなれた。昼間、学校で結実たちにいじめられても、心を折られることはなかった。なぜなら、夜になれば自分は、みんなの希望である魔法少女になれるから。この輝かしい秘密が、煌蘭を支えていた。
しかし、その秘密が、新たな悲劇を招くことになるとは、煌蘭は知る由もなかった。
ある日の放課後、いつものように煌蘭の机にゴミが入れられていた。その横に立つのは、クラスの女王様、結実。彼女はニヤニヤと笑いながら、煌蘭の顔を覗き込む。
「ねぇ、きらら。あんた、ほんとウケるんだけど」
そう言って、結実はゴミを煌蘭の髪に押し付ける。煌蘭は何も言えず、ただ俯くことしかできなかった。その時、煌蘭の脳裏に、夜の街で聞いた、ある声が響いた。
「魔法少女ちゃん、助けて!」
そうだ。私は、魔法少女なんだ。勇気を出さなくちゃダメなんだ。
煌蘭は、震える声で結実に訴えかけた。
「や、やめて...!こんなこと、もう、やめてよ…!」
結実は一瞬、目を見開いたが、すぐにクスクスと笑い始めた。
「えー?なに?急に反抗期?てか、あんた、自分が何様だと思ってんの?」
「…魔法少女は、いじめはしないって、言ってたから…」
「はぁ?何それ。意味わかんないんだけど」
結実の顔から、笑みが消えた。彼女は、煌蘭の腕を掴み、誰もいない教室の隅へと引きずっていく。
「ふざけんな、きらら。てか、魔法少女って何?あんた、魔法少女ちゃんのファンなの?あんたみたいな、こんな汚い奴が、魔法少女ちゃんの名前を出すな」
そう言って、結実は煌蘭の顔に思いっきり唾を吐きかけた。煌蘭は、恐怖で体が固まってしまう。
「あ、そうだ。ちょうどいいの見つけた」
結実は、ポケットからシャープペンシルを取り出す。煌蘭の顔を鷲掴みにし、その芯先を煌蘭の右目に向けた。
「ウケるんだけど。魔法少女ちゃん、いつもキラキラした目をしてるよね。でも、あんたのその汚い目は、マジでムカつく」
「や、やめて…!」
煌蘭の悲鳴が、誰もいない教室に響き渡る。だが、結実は笑いながら、シャープペンシルの芯を、煌蘭の右目に突き刺した。激痛が走り、煌蘭の視界は真っ赤に染まる。
「っ…あああ!」
「マジウケるんだけど。あんた、もしかして魔法少女ちゃんと、一緒にされたかったの?なら、これもやる」
結実は、カッターナイフを取り出すと、煌蘭の腕に、まるで絵を描くかのように、スッと刃を滑らせた。一本、また一本と、赤い線が浮かび上がっていく。煌蘭の涙は、とめどなく流れ続けた。
その日、煌蘭は、ただの「黒百合 煌蘭」として、再び絶望の淵に突き落とされた。しかし、夜になり、魔法少女として変身した時、煌蘭の心は再び光で満たされた。
右目に傷跡を残し、腕にはいくつもの赤い線が刻まれた。だが、人々は、魔法少女の煌蘭が、その裏でどれほどの痛みと絶望を抱えているかを知らない。
煌蘭は、痛む腕を優しくさすりながら、心の中でつぶやいた。
これでいいんだ。魔法少女として生きることに、私の存在理由がある。この輝きが、私を救ってくれる。
たとえ、身体が傷ついても、心がボロボロになっても。
魔法少女であること。それが、煌蘭の唯一の生きがいだった。