短編小説「MONOGATARI」

早くね、、、?
前回 https://magma.com/artist/user-hz711z/posts/68e25697e30d1872d1985716
4話の予告
https://magma.com/artist/user-hz711z/posts/68e36a2ce30d1872d1b58f37

3話 ひどいよ。

季節は移り、世界に本格的な夏が訪れた。
ニアンとライは、二人で浴衣に着替えて、年に一度の花火大会に足を運んでいた。ニアンは黒地に椿の柄、ライは藍色のシンプルな浴衣姿だ。時折見えるギザ歯は、ニアンの目にはやはり「かっこいい」としか映らない。
賑やかな屋台を通り過ぎ、人混みを避けて河川敷の少し外れた場所に腰を下ろした。空には、最初の大きな花が咲いたばかり。ドーンという轟音と、夜空を彩る鮮やかな光に、ライは「うわあ、、、」と声を漏らす。
「きれいだね、ライくん」
「うん、すごく、、、!ニアちゃん、ありがとう。誘ってくれて。」
ニアンは小さく笑い、バッグから線香花火を取り出した。
「線香花火、しよう。これが一番、落ち着くんだ。」
二人は火をつけ、静かに炎の塊がポトリと落ちるのを待った。パチパチと繊細な火花が散る中、ニアンが静かに口を開いた。ライといる時の、いつもの優しい口調だった。
「ねえ、ライくん。ボクが殺し屋になった理由、知りたい?」
ライは線香花火を見つめたまま、小さく「うん」と頷いた。
「ボクの両親はね、昔、殺されたんだ。ボクが今所属している組織の敵対チームにね。」
ニアンは遠い目をした。炎が彼女の青い瞳に揺らめく。
「復讐したい。それだけが、このチームにいる理由。両親を殺されてから、何を見ても、何を聞いても、全部つまらなくて、どうでも良くなった。学校の不良って呼ばれるのだって、本当は、どうでもいいんだ。」
ライはそっと、線香花火を持ったニアンの手に自分の手を重ねた。(おい!!)
「そう、だったんだね、、、」
線香花火が静かに終わりを迎え、火玉がポトリと落ちた。ライは新しい線香花火を手に取り、火をつけた。
「今度は自分の話、聞いてもらえるかな、ニアちゃん」
「もちろん。」
ライは一度深呼吸した。口調はいつものどもり気味だが、その言葉は重い。
「自分、小さい頃、親から虐待を受けてたんだ。この右目が真っ黒なの、見える?」
ライは自分の右目を指さした。
「親に、ひどく殴られて、この目は光を失っちゃったんだ、、、。ある日、親は自分を置いて自殺しちゃったんだ。ライが悪い子だったから、って、遺書には書いてあったけど。」
ライの線香花火の火花が、一瞬だけ強く輝いた。
「一人で街をさまよってたんだ。行くあてもなくて。そしたら、今のチームの人が声をかけてくれて、殺し屋にスカウトされた。生きていける場所が、できたんだ。」
彼の話は、ニアンの話と同じくらい、いや、それ以上に重く、悲しいものだった。
ニアンはライの手を強く握りしめた。(キャー!やだ〜もう!←黙れ)
「ライくん、、、」
「でもね、ニアちゃん。自分が一番傷ついたのは、両親の死じゃない。自分が悪い子だったから死んだんだ、って、心のどこかで思っちゃったことなんだ。」
その瞬間、ニアンの表情が険しくなった。彼女は強くライの手を振り払った。
「何言ってんの!?」
ニアンは突然、声を荒げた。ライの優しい口調とはまるで違う、学校で見せる不良の口調だった。
「親にやられたお前が悪いわけねえだろ!なんでそんなこと思うんだよ!?ライくんは悪くない、全部、アイツらが悪いに決まってんだろ!!」
ニアンはライの胸ぐらを掴み、強く揺さぶった。怒りの色を帯びた瞳には、復讐に燃える炎が宿っていた。
「そんなこと言って、本当はアイツらを許してんじゃねえの!?ボクの復讐の気持ちが、わかんねえのかよ!」
「ニアちゃん!、、、違う!自分は、ただ、自分に居場所をくれた人を、否定したくなくて、、、!」
ライの目にも涙が浮かび、声を震わせた。
「君を否定したくないんだ!!」
ドーンと、夜空に大きな花火が上がった。だが、二人の間には、花火の光も届かない、冷たい溝ができていた。
ニアンはライから手を離し、立ち上がった。
「、、、もういい。」
ニアンはそう吐き捨て、浴衣の裾を翻して、人混みの中へ消えていった。
一人取り残されたライは、花火が打ち上がる夜空の下、膝を抱えて、静かに泣き崩れた。

⠀and67 othersliked this post