短編小説「君を壊してねこと呼ぶ。」

略してきみねこ!!(?)
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【二話】

玄関の鍵を閉めた瞬間、重い静寂が降りてきた。
俺はねこを寝室へ運び、布団へ下ろす。そして、迷わずにその手首を縄で縛り上げた。

最低なことをしている自覚はあった。誘拐、監禁、束縛。
けれど、目を覚ました彼がパニックを起こしてあの家に戻れば、今度こそ本当に壊れてしまう。これは彼を守るための檻だ。

ハンカチで頭部の血を拭うと、隠されていた端正な素顔があらわになり、思わず息を呑む。
彼が目を覚ましたとき、俺を認識していない現実にどう向き合えばいいのか。不安が胸を締め付けた。

「……んぅ……」

ねこが微かに身じろぎし、瞼を開いた。

「……ぇ……だ、誰……?」

予想通りの拒絶。胸がズキリと痛む。やはり俺の存在など知らなかったのだ。
―――いや、"覚えて"いなかった。
だが、怯える彼が次に紡いだ言葉に、俺の思考は停止した。

「……僕は……誰……?」
「は……?」

記憶がない。父親に殴られた衝撃のせいだろうか。
不謹慎にも、俺の脳裏に「都合がいい」という最悪な思考が過った。今なら、あの暴力の親からも、偽りの友人からも、彼を完全に切り離せる。

「……いいか。俺の名前は牡丹。胡蝶牡丹だ」

呆然と俺を見上げる彼の目をまっすぐに見据え、俺は偽りの真実を告げた。

「お前の名前は……『ねこ』だ」

ずっと心の中で呼んでいた秘密の名前。それを本名として刻み込むことで、彼を独り占めしたいという泥泥とした独占欲が首をもたげる。

「……ね……こ……」
彼は記憶のない頭でその響きを反復し、俺を見上げた。
「僕は、ねこ……君は、ほた……」

「そうだ。お前はこの場所から一歩も出てはいけない。外は危ないんだ」

純粋に俺の言葉を信じる彼に、容赦なく嘘を重ねていく。罪悪感で胸が軋んだ。

「……しばらくは、この部屋から出すつもりはない」

外の世界から隔離するため、俺は床に落ちていた自分の黒いパーカーを拾い、彼の体へ乱暴に掛けた。
「……っ!」
「動くな」

恐怖に肩を跳ね上げるねこに、冷淡な声しか掛けられない自分に嫌気がさす。それでも、もう引き返せない。
パーカーの胸元にあしらわれた猫のマークが、これからの偽りの生活を物語っているようだった。
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ねこくんかわいい。

.匿名Rサンand72 othersliked this post
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