小説「魔法少女は報われない★」

前回 https://magma.com/artist/user-hz711z/posts/68a85d77941b5fb97b24320f
エピローグ https://magma.com/artist/user-hz711z/posts/68a96942941b5fb97b464bec

【最終話:哀しい怪物の輝き】

煌蘭は、街で自分を罵倒した男を怪物に変え、それを魔法で救った。人々の賞賛は、かつてないほど熱狂的なものだった。煌蘭は、その光景を、恍惚とした表情で見つめていた。
「魔法少女ちゃん、今日もありがとう!」 「最高!今までで一番すごかった!」 「やっぱ魔法少女ちゃんがいないと、この街はダメだね!」
煌蘭は、人々からの感謝の言葉に、言いようのない喜びを感じていた。そう、これだ。これが、私が求めていたもの。この輝きこそが、私の存在理由なのだ。
翌日、煌蘭は、学校の屋上で結実を待っていた。昼間の私は、ただの黒百合煌蘭。夜の私は、みんなの希望である魔法少女ちゃん。そうやって切り離してきたはずの二つの人格が、今、一つになろうとしていた。
屋上に現れた結実は、いつものように煌蘭を嘲笑する。
「なーに、きらら。こんなとこで突っ立ってさ。てか、お前、最近顔色悪いけど、どうしたの? ウケるんだけど」
煌蘭は、何も答えない。ただ、結実の顔をじっと見つめる。その瞳の奥には、憎しみと、そして、甘い期待が混ざり合っていた。
「おい、無視すんなよ。マジムカつく」
結実が、煌蘭の顔に手を伸ばした、その時。煌蘭は、手に隠し持っていたステッキを、誰にも見られないよう、そっと握りしめた。
「…さよなら、結実」
煌蘭の口から、掠れた声が漏れる。そして、ステッキがぼんやりと光を放った、その瞬間。結実の体が、見る見るうちに巨大な怪物へと姿を変えていく。
「な…なに、これ…!」
結実の声は、すでに怪物の咆哮へと変わっていた。恐怖で歪んだ結実の顔を、煌蘭は冷たい視線で見つめる。
そうだ、これでいいんだ。結実を怪物にすれば、私がそれを倒す。みんなは、また私に感謝してくれる。私の輝きは、永遠に続く。
だが、煌蘭は知っていた。これは、終わりではない。この行為は、もう止めることができない。自分が生み出した闇を、再び光で照らすことでしか、もう輝けないということに。そして、その重く暗い考えは、甘い蜜のように彼女の心に染み渡っていく。
煌蘭は、魔法少女として街へと飛び立った。
その夜、街には、かつてないほど巨大な怪物が現れた。人々は悲鳴を上げ、パニックに陥る。だが、その中に、どこか期待の眼差しを向ける者たちがいた。
「大丈夫、魔法少女ちゃんが来てくれる!」 「きっと、今日も助けてくれるよ!」
煌蘭は、その声を背中に受けながら、巨大な怪物となった結実と対峙する。怪物の顔は、結実のまま。恐怖と絶望に歪んだその表情は、煌蘭の胸に、かつての自分の姿を映し出していた。
「さあ、みんな見てて…!」
煌蘭は、自らが創り出した闇を、自らが放つ光で打ち消す。
「スノードロップ・ワスレナル・カーネーション☆」
夜空に、まばゆい光が閃いた。
怪物は、悲痛な叫び声を上げながら、光の粒となって消えていく。その光景は、誰にも「黒百合 煌蘭」の存在を悟られることなく、ただ魔法少女ちゃんの勇敢な戦いとして人々の目に焼き付けられた。
だが、この瞬間、煌蘭は、自分がすでに、かつて憧れていた輝く存在ではなく、闇の中でひっそりと光を放つ、哀しい怪物になってしまったことに気づいていた。
煌蘭の物語は、まだ終わらない。
今日もまた、彼女は街の片隅で、誰にも気づかれないようにステッキを握りしめている。
なぜなら、この輝きを失った時、彼女の存在理由もまた、失われてしまうから
憧れだった輝きに背を向け、彼女は今日も、自らの手で世界を壊していく。
永遠に続く螺旋の中で、ただひたすらに、光と闇を繰り返しながら。

「スノードロップ・ワスレナル・カーネーション★」

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