短編小説「水色のジブン」

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3話 ”葉月”の笑顔

「また来ちゃいました!」
「水色の画用紙さんの配信、楽しみにしてました!」
きゃろるさんととんかつソースさんが、毎週のように配信に遊びに来てくれるようになった。たった二人のファンだったけれど、葉月にとってはかけがえのない存在だった。
「こんばんは!きゃろるさん、とんかつソースさん、今日も来てくれてありがとうございます!」
葉月は、以前のようなか細い声ではなく、明るく元気な声で挨拶した。二人の温かいコメントに、葉月は自然と笑顔になれた。
「今日は、新しいキャラクターのデザインを考えようと思います。みんなはどんな子が好みですか?」
葉月は、キャラクターのラフスケッチを画面に映し出す。
きゃろる:ツインテールの子がいいな!
とんかつソース:フード付きの服とかどうですか?
二人のコメントに、葉月は夢中になってアイデアを膨らませていく。それは、学校で誰かのために演じていた自分とは違う、心から楽しいと思える時間だった。
ある日のこと、いつものように配信をしていると、見慣れないユーザーからのコメントが投稿された。
雪見だいふく:友達に勧められて来ました!
新しいファンだ。葉月の心臓が、ドキリと大きく鳴った。
「はじめまして!雪見だいふくさん、来てくれてありがとうございます!」
そこから、配信のコメント欄は、少しずつ賑やかになっていった。
おむすび:絵、めちゃくちゃ上手い!
メロンパン:キャラデザのセンス、好きです!
一人、また一人と、葉月の描く絵に魅了され、配信に足を運んでくれる人が増えていく。コメント欄を埋め尽くすメッセージに、葉月は胸が熱くなった。
「みんな、本当にありがとう……!」
葉月は、涙をこらえきれず、感極まって言葉に詰まった。
「これからも、みんなが笑顔になれるような、素敵な絵をたくさん描いていきたいです!」
画面には映らないけれど、葉月は心からの笑顔でそう言った。
学校での葉月は、相変わらず「明るく振る舞う小鳥遊葉月」を演じ続けていた。だが、以前のような空虚感はなくなっていた。家に帰れば、画面の向こうで待ってくれている人たちがいる。自分のありのままを認めてくれる人たちがいる。
(私、ちゃんと、笑えてるんだ)
葉月は、VTuberとしての自分「水色の画用紙」として、少しずつ本当の自分を取り戻していくのだった。

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