短編小説「水色のジブン」

前回 https://magma.com/artist/user-hz711z/posts/68cb327b8f8293f757371479

特別編 https://magma.com/artist/user-hz711z/posts/6a12f56158da68ddf837b064

エピローグ 凍りつくことのないように。
ある日のこと、葉月は父親から電話を受けた。
「煌蘭が……事故にあったそうだ」
受話器の向こうから聞こえる声は、葉月が知る父親の声とは違って、ひどく震えていた。別の街の道路に、血まみれで倒れていたという。意識はまだ戻らない。
葉月は、いてもたってもいられず、煌蘭が搬送された病院へと向かった。病室のベッドに横たわる煌蘭の姿は、あまりにも小さく、痛々しかった。顔には擦り傷があり、包帯が巻かれている。目に眼帯もしていて、葉月が知る、幼い頃の煌蘭の面影はそこにはなかった。こんな再開があって良いのだろうか。
まる二日、煌蘭は目を覚まさなかった。葉月は、その間ずっと、煌蘭のそばにいた。その間に、煌蘭の持ち物から、魔法少女として活動していたことを知った。キラキラと輝く魔法のステッキ、ボロボロになった衣装、そして、インターネットでの心ない書き込み。葉月は、胸が締め付けられるような思いで、それらをじっと見つめていた。
三日目の朝、煌蘭の瞼がゆっくりと開いた。
「……お姉ちゃん?」
葉月は、煌蘭の小さな手を握り、静かに頷いた。
「もう大丈夫だから。心配しないで」
煌蘭は、葉月の言葉に、一瞬戸惑いの表情を浮かべた。しかし、葉月がそばにいることに安堵したのか、少しだけ落ち着きを取り戻したようだった。

そして、葉月は、意を決して、煌蘭に尋ねた。
「煌蘭の幸せって、何?」
煌蘭は、ぼんやりと天井を見つめながら答えた。
「人から、求められること……かな」
その答えに、葉月の胸は痛んだ。
「私はね、それは違うと思う」
葉月は、煌蘭の手を握る手に、そっと力を込めた。
「だって、そのせいで煌蘭はこうして傷ついたんじゃない。自分の幸せのために自分が傷つくのって、おかしいじゃない」
葉月の言葉に、煌蘭は何も言えなかった。葉月は、煌蘭の魔法少女の衣装を優しく撫でた。
「もう、誰かのために傷つく必要はないんだよ」
葉月は、煌蘭の瞳をまっすぐに見つめ、静かに、そして力強く言った。
「煌蘭は、煌蘭のために幸せになってもいいんだよ」
煌蘭の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。それは、自分自身をずっと縛り付けていた鎖が、ようやく外れたことに気づいた、安堵の涙だった。
煌蘭の涙は、止まることなく頬を伝い続けた。それは、痛みでも悲しみでもない。何年も心の奥底に閉じ込めていた、本当の感情が溢れ出した証拠だった。
「私、本当は、もう魔法少女になんかなりたくなかった……」
絞り出すような声で、煌蘭はそう言った。
「誰も助けてくれなんて言ってくれないのに、無理して、無理して……」
葉月は、煌蘭の背中を優しく撫でた。
「うん、知ってるよ。もう、頑張らなくていいんだよ」
その言葉に、煌蘭は葉月の胸に顔を埋め、声を上げて泣き始めた。葉月もまた、妹の頭を抱きしめ、静かに涙を流した。幼い頃に離れ離れになってしまった二人の、孤独な時間が、今ようやく溶け合っていくようだった。
数週間後、煌蘭は無事に退院した。葉月は、自分の親戚の家に煌蘭を連れて行った。最初は戸惑っていた親戚たちだったが、葉月の強い意志と、弱々しい煌蘭の姿を見て、何も言わなかった。
煌蘭は、葉月の部屋で過ごすようになった。魔法のステッキは、もう彼女のそばにはない。葉月は、煌蘭に何も強要しなかった。ただ、そばにいて、美味しいドーナツを一緒に食べ、お互いの好きな音楽やアニメの話をした。
ある日、葉月は「水色の画用紙」として配信をしていた。その隣で、煌蘭は、少しだけ元気になった顔で、葉月が描いた絵をじっと見つめていた。
「…お姉ちゃんの絵、すごく綺麗だね」
煌蘭は、はにかむように言った。葉月は、にっこりと微笑み、煌蘭にペンを渡した。
「煌蘭も、一緒に描いてみる?」
煌蘭は、少し躊躇しながらも、震える手でペンを握り、真っ白い画用紙の上に、小さな星を描いた。それは、かつて彼女が憧れた、キラキラと輝く星だった。しかし、その星は、誰かのためではなく、煌蘭自身のために描かれた、たった一つの、かけがえのない光だった。
窓の外では、雪が静かに降り続いていた。だが、葉月と煌蘭の心は、もう凍りつくことはない。二人の間には、温かい光が灯り、まるで春を待つように、静かに、そして確かな希望が育っていた。

本当に終わり!!!魔法少女ちゃんの世界とはまた別の世界線ってことで見て下さいね!!あくまで”水色のジブン”のエンドということで!

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りおねる
•1yr
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